第6編 「社会人の距離」

第6編 「社会人の距離」

言わずもがな—
仕事における人間関係は社会人にとって
重要なテーマです

仕事の悩みの要因として常に上位にあるこの悩みは
早々解決できるものではありません

上司と部下—
同僚同士—
取引先—
さまざまな人間関係の中で、
立ち位置と態度を変えながら 毎日を過ごさなければならず 全ての人と気遣いなく接していくことは 現実的に不可能です 学生時代には、好き嫌いはあっても 気を遣って距離を測りながら付き合っていくような 煩わしい人間関係はそうはなかったはずです 私も例外ではありません 無能な上司に頭を下げ 部下の失敗に頭を悩ませ 気の合わない同僚と上っ面の会話を交わし 取引相手のつまらない冗談に愛想笑いを浮かべる —本音と建前を武器と防具に しかもその大半が、互いのそれが社交辞令だと わかってそうしているのだから滑稽なものです 本当、茶番もいいところです 子供のままごとの方がよっぽど人間味がある あなたにも思い当たる節があるのではないですか? と、こんな問いかけをしたところで もちろん私にはそれを変える力などありませんが— しかしそんな社会のなかでどう振舞っていくべきかは 一考に値するものでしょう そこで、不祥この私がそのメカニズムから 語らせていただきましょう 先にも話した通り、社会人を悩ませるような 曖昧な距離感の人間関係というのは 学生時代にはなかったものです。 では、(人間関係における)学生と社会人の違いとは いったいなんでしょうか— それは ——損益の還元先が個人か組織か という違いです。 学生にとっては損益の還元先は自分個人です。 気の合わない人と接する時、 暴言を吐こうが無視しようが睨みつけようが それは自分とその相手との関係性でしかありません。 そして、自分が一生懸命勉強やスポーツに励めば その分の結果が自分に還元されます。 ——損も得も自分次第ということですね。 ですが社会人は違います。 組織に所属している以上
(あるいは個人事業であっても) 自分の人間関係はその周囲にも影響します。 ビジネスにおいては集団として 利益を上げることが求められます 上司と関係が悪くなれば仕事がし辛くなり 部下のやる気を削げば生産性が下がり 取引先の機嫌を損ねれば商機を失います 自分の振る舞いで周りの人間にも影響が生じるのです そしてこれは逆も同じことです。 自分がどれだけ頑張り成果を上げても 周りに足を引張られては結果はでないということです 「真に恐るべきは有能な敵ではなく無能な味方だ」 かのナポレオンの言葉ですがまさにその通りですね 仕事終わりに飲みに行く相手は選べても 一緒に仕事をする人は選べませんからね —幸も不幸も一蓮托生 —善も悪も表裏一体 —良くも悪くも共同体 社会人にとっては ——損も得も自分と周り次第ということです。 ここまで当たり前のことを述べましたが、 これを意識して生活している人は少ないでしょう そして大切なのは、この関係性がそのまま コミュニケーションに反映されるということです 取引先への気遣いなどは言うまでもないでしょうが、 部下の失敗を怒る上司はどうでしょうか これは部下の側からは見えにくいものですが 上司が怒るのはただの怒りとは訳が違います 失敗によって上司自身、
あるいは周りの人が目指す結果が 達成できなくなるのを防ぐためのものです ——感情的な怒りではなく、指導手段としての怒りです 誰だって望んで不愉快になりたい人などいません その上司も怒りたくて怒っているのではありません みんな仲良くできればそれがベストです 月並みな物言いではありますが— ただ、これは 有効な指導方法を学ばず
感情表現に訴えるしかないという 上司の無能さも見逃してはいけませんがね 結局のところ 変に気を使わず、みんな仲良く居たいけれど 集団としての結果のために距離を測らざるを得ない といったところでしょうか 世知辛い世の中ですが、救いがあるとすれば この関係性が大半の人にとって
共通の認識であることでしょう ——仕事として一線を引き、人として寄り添う 仕事と人間関係を秤にかけて どちらかを犠牲にする必要はありません 向かい合って距離を取るのではなく 同じ方向に向かって距離を確認し合う そんな関係性こそ 社会人の 大人の振る舞いでしょう 私もくありたいものです こうして詭弁を弄さずに本音を語れるように—

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